■「3次元規則性配列多孔体」とは?
3次元に孔が規則的に配列した構造体のことです。「逆オパール構造」とも言います。英語では、
"
3 Dimensionally
Ordered
Macroporous"
単語の頭文字を組み合わせて、「3DOM」とよく言われます。
パチンコ玉を箱に入れると最密充填の形できれいに配列します。パチンコ玉のサイズが揃っているからです。そして僅かですが、球と球の間に隙間が生じます。例えばこの隙間に別の材料を流し込んで、球を除去することができれば、球が存在した部分は球形の空隙になり、球と球の隙間だった部分は骨格になります。これが
「3次元規則性配列多孔体」です。
3次元規則性配列多孔体(CDシステム(株)様 作成)
オパール宝石は、実は粒径の揃ったSiO
2の微粒子が配列し、その隙間を水分を含んだSiO
2が埋めたものです。つまり微粒子が配列したものです。ですので、「逆オパール構造」とは、SiO
2粒子が抜けた構造のことを指します。
オパール宝石
■「3次元規則性配列多孔体」の特徴 [1]
基本的に粒径の揃った微粒子を鋳型にし、球を抜いて作ります。ですので、以下の特徴があります。
1)鋳型にする球のサイズで、孔の径を簡単に変えられる
2)様々な材料で多孔体ができる
3)表面積が大きい
4)規則性が高い
5)簡単な設備で作製できる
1)は鋳型にする粒子のサイズがそのまま孔径になりますので、粒子が入手でき後で除去できれば、簡単に孔の径を変えることができます。弊社でも自社製のポリスチレン ナノ粒子(100nmと300nm)を使ってそれぞれに応じた孔径の多孔体ができることを確認できています。
2)は粒子の隙間に充填する骨格材料を選べることです。
活性炭やゼオライトなどの既存の多孔体では、骨格材料が決まっています(それぞれ、炭素、アルミナケイ酸塩)が、粒子を鋳型にすると、例えば、TiO
2やZrO
2、Al
2O
3などのセラミックスや金属でも可能です。つまり、
・鋳型粒子の隙間にどの様にして骨格材料を充填するか?
・充填後にどの様に鋳型粒子を除去するか?
ができれば基本的に可能です。
弊社でもセラミックスで幾つか実績がありますので、こちらをご覧になってください。
概要→
http://www.nanomir.com/3DOM.html
TiO2→
http://www.nanomir.com/113644-crop.jpg
ZrO2→
http://www.nanomir.com/ZrO2-3DOM.jpg
Al2O3→
http://www.nanomir.com/Al2O3-3DOM-crop.jpg
3)については、簡単な計算をしてみます。
20umの立方体の表面積は、2.4 x 10
-9 (m
2)です。
仮にこの立方体が300nmの孔が開いている規則性配列の多孔体とすると、表面積は8.37 x 10
-8 (m
2)となり、孔がない場合に比べ35倍の表面積になります。さらに100nmの孔が開いている多孔体だとすると、表面積は2.51 x 10
-7 (m
2)で105倍、50nmの孔が開いている多孔体だとすると、表面積は5.02 x 10
-7 (m
2)で209倍にもなります。孔のない20um立方体を基準にして整理すると、下記の様になります。
・20um立方体、孔なし
1倍
・20um立方体、300nm径の多孔体
35倍
・20um立方体、100nm径の多孔体
105倍
・20um立方体、50nm径の多孔体
209倍
4)は、鋳型に粒径の揃った粒子を使うため、あとは配列させることができれば、規則性の高い多孔体ができます。なお、骨格の体積の割合は26%以下[2]、空隙の体積比率は74%以上[3,4]と見積もられています。
5)ですが、半導体リソグラフィーに必要なクリーンルームや露光装置などは必要ありません。ラボレベルの量であれば、台所程度の設備で、ナノ多孔体の作製が可能です。
[文献]
[1]A. Stein, B. E. Wilson, and S. G. Rudisill, Chem. Soc. Rev., 42, p2763-2803 (2013)
[2]S.Tabata, Y. Isshiki, and M. Watanabe, J. Electrochem. Society, 155(3),
K42-K49 (2008)
[3]R. C. Schroden, M. Al-Daous, C. F. Blandford, and A. Stein, Chem. Mater.,
14, p3305-3315 (2002)
[4]吉野勝美、武田寛之、「フォトニック結晶の基礎と応用」、コロナ社、(2005)
*ご検討・誤使用の際には関連特許にご配慮くださる様お願い致します。