粒子の配列方法には幾つかの方法があります。
- 自然乾燥
- 溶媒中での沈降
- 遠心分離
- ろ過
- 分散液からの基板の引き上げ
- 基板間への挟み込み
- スピンコート
- 水表面での単層膜形成
などです。
(a)はシャーレなどの容器にナノ粒子分散液を入れ、粒子が分解・変形しない温度で乾燥させる方法です。弊社が展示会などでお客様にお見せしているナノ粒子の乾燥体は、この方法で得てます。
(b)は溶媒と粒子との比重差を利用して、粒子だけを沈降させる方法です。放置するだけですので、手間はかかりません。ただポリスチレンは水と比重がほぼ同じなので、水分散液の場合には使えません。水分散のシリカ粒子では使えます。ただ時間がかかるのが難点で、私の経験では2〜3週間かかりました。
(c)は遠心分離機を使ってより短時間に配列させる方法です。これも(b)と同じく、分散液と粒子との比重差が大きい方が短時間でできます。弊社ポリスチレンナノ粒子分散液でも試した事がありますが、比重差が僅かなため、数十分はかかりました。
(c)遠心分離による配列 [1}
(d)は対象の粒子径によって、濾過膜を選ぶ必要があります。ナノ粒子の場合には、限外濾過膜を使います。弊社では、この方法で濃縮しております。コスト面では他の方法よりも不利なのですが、(a)(b)よりは短時間で確実です。
(d)ろ過による配列 [1]
(e)はcapillary forceを利用する方法です。つまり分散液中に基板を浸し、ゆっくりと垂直に引き上げる事で基板に粒子が配列します。手作業では難しいので、市販の引き上げ装置を利用された方が一定条件でできると思います。
(e)基板の引き上げによる配列 [2]
(f)は上下基板の隙間に分散液を注入して配列させる方法です。液晶モニターはミクロンギャップのガラス基板の隙間に液晶を注入していますが、それと同じイメージです。
ミクロンレベルの隙間にナノ粒子分散液を注入すると配列し易くなるため、非常に鮮やかな色が出ます。
(f)隙間へ充填による配列 [1]
(g)は半導体プロセスなどで使うスピンコーターを使います。基板を高速回転させて分散液を滴下し、回転中に乾燥させる方法です[3]。スピンコーターはモーターで一定速度で回転させるだけですので、プログラムなど細かなことにこだわらなければ、自作も十分可能です。パソコンの冷却ファンで自作した事があります。ただ均一に塗布できる条件を見つけるのは、今回ご紹介した中では一番難しいかもしれません。
(h)は濃縮した分散液を、ピペットを使って水を張ったシャーレ内でゆっくりと放出する方法です。ナノ粒子が水表面で広がり、単層膜ができます。予めシャーレ内にはSi基板などを沈めておき、液を乾燥させてこの基板上に貼付けます。
(h)水表面での配列[4]
基板表面の電荷、および粒子表面の電荷も粒子配列に影響があるようです。
マイカやガラス基板の表面は負の電荷を帯びています。これらを基板とした場合、弊社ナノ粒子の様に負の電荷を持った粒子分散液を滴下すると、エネルギー的に安定な場所を求めて静電反発で粒子が動き回ります。安定な場所を見つかると、次々に粒子が配列するとのことです[5]。
(a)〜(h)以外にもあるかと思います。また粒子の素材やサイズ、目的に応じてそれぞれの方法にも向き不向きがございますので、ご確認なさってください。
[文献]
[1]A. Stein, E. Wilson, and S. G. Rudisill, Chem. Soc. Rev., 42, 2763 (2013)
[2]H.Cong, and W. Cao, Langmuir, 19, 8177 (2003)
[3]斎藤ら、日本金属学会誌、77巻、第1号、27 (2013)
[4]P. Patoka, and M. Giersig, J. Mater. Chem., 21, 16783 (2011)
[5]A. J. Haes, et. al, J. Fuluorescence, 14, 335 (2004)
*ご検討・誤使用の際には関連特許にご配慮くださる様お願い致します。